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【著者インタビュー】「オアシスってさ、音楽の部分が語られてないと思ったんだよ」――『What’s the story? オアシス全曲解説』著者が語る舞台裏

インタビュー/鈴木あかね 構成/ジーンブックス編集部

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結成30周年を迎え、再結成ツアー「Oasis LIVE ’25」で再び世界中を熱狂させているオアシス。 そんな今だからこそ、”あらためてオアシスのすべてに向き合う”ための一冊がある。 オアシスは1枚目と2枚目だけ聴けば十分? こうした通説に、大声で”No!”を突きつけるのが『What’s the story? オアシス全曲解説』(原書タイトル:A Sound So Very Loud)だ。 隠れた名曲、佳曲を含む全曲を通してオアシスの軌跡を描く本書。著者はイギリスの音楽週刊誌NMEで長年オアシスを追い続けてきた音楽ジャーナリストのテッド・ケスラーとヘイミッシュ・マクベイン。日本語版刊行を機に、「rockin’ on」誌で同じくオアシスを追ってきたライター/翻訳家の鈴木あかねさんが2人にインタビューを行った。メール取材ながら、2人は終始ノリノリで答えてくれた。

左/英国版原書 右/日本版

 

◾️音楽サブスク時代だからこそ「当時に戻ったような感覚を」――著者が語る構成の狙い

共著者 テッド・ケスラー氏

――全134曲分という膨大な量の執筆、お疲れさまでした! 本書で、ノエルとリアムがヴォーカルを奪い合い、大抵はリアムが「これはオレが歌う!」と言い張ってノエルが譲歩するというエピソードがありました。今回の分担でも「これは絶対、俺が書く!」とかになったりしたのでは?

テッド・ケスラー(以下、テッド):そうそう、まさにそういう感じだったよ! ロンドン、ソーホーのオールド・コンプトン・ストリートにある「カフェ・ボエーム」って店でオアシスの全曲リストを1曲ずつ見ていってね。2人とも何度もオアシスにインタビューしてきたから、「その曲を語ったインタビューをやったことがあるかどうか」を判断基準にした。たとえば僕は、リアムが“エイント・ガット・ナッシン”についてかなり細かく話していたインタビューを持ってたから担当したとか、そんな感じだね。

 

――本書の中で個人的に気に入っているエピソードはありますか。

ヘイミッシュ・マクベイン(以下、ヘイミッシュ):“ストップ・クライング・ユア・ハート・アウト”は書いてて楽しかったな。あの曲がたどってきた運命が好きなんだ。最初は2002年の日韓ワールドカップでイングランドが負けたとき、ニュースで盛んに流れて、負けたときのテーマソングみたいになった。そのあと、オーディション番組『Xファクター』の出場者が歌う曲の定番になった。(ワン・ダイレクションの)ハリー・スタイルズが初めてテレビに出て歌ったのもこの曲なんだよね。最近だと『I Swear』(2025年)っていう美しいイギリス映画のサントラでも使われてる。曲がいまでも生き続けてるんだよね。

テッド:僕が書いてていちばん楽しかったのは“シャンペン・スーパーノヴァ”かな。当時の思い出が一気に蘇ってきてね。

 

――本書はオアシスの影響源や制作エピソードを拾うだけでなく、音楽的にもかなり踏みこんでいますよね。下降コードなど、テクニカルな用語まで使ったオアシス論はこれまで読んだことがありません。

原書『A Sound So Very Loud』

テッド:だよね。オアシスってさ、まさに音楽の部分が語られてないと思ったんだよ。兄弟ゲンカとかの物語は本や雑誌でも語り尽くされていて、もちろんそれはそれで僕たちも大好きだけど、音楽そのものを深く掘り下げたものが存在しなかった。でもオアシスほどきちんと音楽を語るべきバンドはいないからね。

 

――実を言うと、ノエルの曲の具体的なネタ元がしっかり整理されていて便利だなと思いました。日本では「パクリ」に否定的な意見も根強いです。本書ではノエルが言う「若いリスナーに音楽は過去の遺産の積み重ねでできている」ことをあらためて伝えたかったのでしょうか。

ヘイミッシュ:そうだね。ノエルはいつだって何をどこからとってきたかって正々堂々と話してきたしね。といっても、ネタ元を正直に話してきたのは別にノエルが初めてじゃない。ジョン・レノンの有名な言葉があるでしょ? 本当の意味で自分で書いたのは“ストロベリー・フィールズ・フォエヴァー”と“アイ・アム・ザ・ワルラス”の2曲だけで、あとは盗作だっていうやつ。まあ、どこから盗んだのかまでは説明してくれなかったけどね(笑)。でも、これはどんなアート分野のアーティストにも共通してると思う。他の作品からほんの少しずつ要素を取り出して、それを組み合わせて、自分だけのオリジナルなものを創り上げるっていう。

 

――序章では、時代を越えて人の心をつかむ音楽を作ったのがオアシス、と書いています。それでも制作年ごとの社会現象や事件を振り返るページを設け、当時の時代背景や音楽シーンの変遷もていねいに追っていますね。やはりロックは時代精神の中から生まれるのだということも伝えたかったのでしょうか?

テッド:それもある。あと単純に、この曲が実際にはどれくらい昔の曲なのかを直感的に感じてもらうのに便利かなと思って。いまの(音楽サブスク)時代だと、1994年と2020年、2005年の曲が混ざったプレイリストを違和感なく聴いたりするよね? でも、それが作られた年に起きた出来事を読んでから曲を聴いてもらうと、当時に戻ったような感覚を味わってもらえるかなと思ったんだよ。

 

――この本はオアシスの始動から解散、復活の旅を描きつつ、共著者テッドさんにとっては、いつかリアムに名前を覚えてもらえるのかという伏線ストーリーもありますね。

テッド:初めてオアシスを見たのは1994年、ロンドンのオックスフォード・ストリートにある100(ワン・ハンドレッド・)クラブだった。もう超衝撃的なギグだったよ。当時の僕は音楽ジャーナリストとしてまだ駆け出しで、それから、この30年以上、オアシスは僕の人生とキャリアの大きな一部を占めている。僕はリアムが人間として大好きなんだ。本当にジェントルマンで、年を重ねるごとにますます紳士的になっていってる。

 

◾️オアシスの礎を築いたボーンヘッド――語られざる裏話

共著者 ヘイミッシュ・マクベイン氏

 

――日本ではボーンヘッドの人気も根強いです。残念ながら抗ガン治療のために来日できませんでしたが、本書から漏れたエピソードなどがあれば教えてください。

ヘイミッシュ:ボーンヘッドは本当に最高の男だよ。本人に会ったことがあれば絶対に誰でもそう言うはず。ノエルも再結成一発目のカーディフのライヴで「ボーンヘッドなしではオアシスは存在しなかった」と言ったよね。僕がいちばん好きなボーンヘッドのエピソードは『ディフィニトリー・メイビー』のレコーディングのときだな。リアムに「このスタジオは(幽霊が)出るんだぜ」って言って、新聞紙を釣り糸で釣って一枚一枚めくったっていう。リアムは本気でビビってたんだって。

 

――じつは本書冒頭の献辞の部分の翻訳にかなり苦労したんです。この本が捧げられている「O.A.」ってオアシスのことですか?

ヘイミッシュ:やったー! そこ突っ込んでくれてめちゃくちゃ嬉しいよ! 「O.A.」は僕らが友達たちとやってるWhatsAppグループの名前でね(訳註:WhatsApp は欧米圏のメッセージ・アプリ。つまりLINEグループと同義)。「Oasis Anonymous(オアシス・アノニマス)」の略、「Alcoholics Anonymous(匿名アルコール依存症者の会)」をもじりでね。要するにオアシスの話ばっかりして友達や家族を辟易させてる僕たちが、誰にも遠慮せず、安心してオアシスについて語り合える場なんだよ。2018年頃からやっていて、当然だけどここ1年は活動がめちゃくちゃ活発になってる。

 

――それ、入りたい人がたくさんいると思います! では最後に日本の読者へのメッセージを。

ヘイミッシュ:日本ほどオアシスを愛してくれてる国はない。信じないかもしれないけど本当に本当だよ。『デフィニトリー・メイビー』の発売直後、1994年の初来日で、オアシスは自分たちがどこまでビッグになっていくんだってのを実感したんだ。リアムが僕に話した言葉をそのままここに文字起こししておくね。

「言葉がわからない連中が俺らの曲を歌ってる。マジでぶったまげた。たとえばの話、今、日本のバンドがイギリスに来たとして、みんなが『こいつら神だろ』って言ってもよ、俺なんかだと、きっと『いやいや英語でやってくれよ』ってなると思うんだよ。で、俺らも日本人にとってはそう聴こえてたわけだろ? なのに日本のファンはちゃんと受けとめてくれた。あれで音楽の力を思い知ったっていうか。言葉の壁をすっ飛ばして、フィーリングに直球ぶちかませるんだなって。最初の日本ツアーはホント最高だった。覚えてるのはクソ暑かったことと、若い子たちがめちゃくちゃ大騒ぎしてたこと。俺ら、まさにそのためにやってるわけだろ? イケてる服もゲットできたしさ。サイズがちょっと小さいけど、ま、いつか着られるようになるだろ」

 

インタビュアープロフィール

鈴木あかね
出版社ロッキング・オンを経て、映画・音楽ライター、翻訳家。海外アーティストや俳優、監督のインタビューを数多く行なっている。著書に『現代ロックの基礎知識』(ロッキング・オン)ほか。訳書『オアシス ザ・マスタープラン』(ジーン・ブックス)など。ドキュメンタリー映画『オアシス:スーパーソニック』の日本語版字幕監修も担当。

 


『What’s the story? オアシス全曲解説』

 「この本は必読だ。ヘイミッシュとテッドほどバンド、音楽、その影響について知っている人はいない」
――マット ・ ホワイトクロス( 映画 『オアシス : スーパーソニック』監督 )

ギャラガー兄弟を“誰よりも深く知る”音楽ジャーナリスト、テッド・ケスラーとヘイミッシュ・マクベインが全134曲の解説を軸にオアシスの背景とその時代性を鋭く描き出す。バンドやそのマネジメントとも深い関係を築いてきた彼らだからこそ書けた、オアシスの“内側”に迫る決定的ドキュメント。

◾️“ドント・ルック・バック・イン・アンガー”“ワンダーウォール”などの代表曲からB面、隠れた名曲まで――全楽曲の制作背景と文化的影響を徹底解説。
◾️1994~2009年のギャラガー兄弟とのインタビューから、未公開エピソードや舞台裏を多数収録。

私たちにとって、オアシスとは何か?

長年オアシスを取材してきた著者が、楽曲解説を軸にオアシスというバンドの背景と社会的影響力、時代性を鋭く描き出した唯一無二の決定版!

書誌情報
タイトル:What’s the story? オアシス全曲解説
著者名:テッド・ケスラー/ヘイミッシュ・マクベイン
翻訳者名:鈴木あかね
仕様:A5判/ハードカバー/452ページ
価格:定価3,520(本体3,200円+税)
ISBN:978-4-910218-39-7
発売日:2025年10月7日
発行元:ジーンブックス/株式会社ジーン

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テッド・ケスラー/ヘイミッシュ・マクベイン

Profile

テッド・ケスラー/ヘイミッシュ・マクベイン

テッド・ケスラー
音楽ジャーナリスト。イギリスの音楽週刊紙NME編集部を経て、月刊音楽誌Qの編集部へ。初のオアシス取材はNME時代の1994年、デビュー・シングル“スーパーソニック”のリリース直後だった。オアシスとのインタヴューは十数回を超え、最後の取材は2009年、アムステルダムの移動中、バンド解散の数か月前だった。リアム・ギャラガーの表紙インタビューもこれまでに5回担当。UKロックに関する著書多数。イギリス在住。

ヘイミッシュ・マクベイン
音楽ジャーナリスト。NME編集部に在籍中、オアシスの解散劇を最前線で目撃。バンド最後の公式ツアー・パンフレットを執筆。2018年、ノエル・ギャラガーの『Any Road Will Get Us There (If We Don't Know Where We're Going)』を共著した。『ビィ・ヒア・ナウ』リイシュー盤のライナーノーツも執筆。これは公式オアシス展『CHASING THE SUN: OASIS 1993 - 1997』で拡大展示された。イギリス在住。

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