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ニューヨーク・ドールズ
ロックフォトグラファー、ボブ・グルーエンの思い出話【5】

初出 Tokyo Journal #276 reprinted courtesy of Tokyo Journal 撮影/Bob Gruen

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70年代、80年代のロックスターたちとの日々を綴ったエッセイを、編集部が厳選してご紹介!全9回を1話ごとに平日連日配信

英字雑誌Tokyo Journalにて連載された、世界的ロックフォトグラファー、ボブ・グルーエンの大好評ロックエッセイを、同誌編集部のご厚意により日本語バージョンでお届けします。
本連載では、世界中のロックスターたちに愛されたボブ・グルーエンの幅広い交友ぶりにフォーカスを当てました。
今年発売されたばかりの、ボブ・グルーエン初の自伝ライト・プレイス ライト・タイム あるロック・フォトグラファーの回想』(ジーンブックス)の中でより詳しく語られるエピソードもありますので、本書を片手に読み比べつつ、ロック黄金期の回想ドキュメンタリーをお楽しみください。

<第5回>ニューヨーク・ドールズ

New York Dolls

The New Yorks Dolls photographed at Studio 29, NYC. November 1973. © Bob Gruen

私がジョン・レノンとヨーコ・オノに初めて会った頃、彼らはエレファンツ・メモリーというバンドと活動していました。その直後から、このバンドの撮影をずいぶんとこなすようになります。
ある時、彼らがアルバムを出すことになり、そのジャケットに私の写真を使いたいということで、彼らのマネジメント事務所に出向きました。すると、そこで働いていたトニー・マシーンという人物から、同じように面倒を見ている別のバンドがいて、ライブがすばらしいのでぜひ観てほしいと言われたのです。
そのバンドがニューヨーク・ドールズでした。そして私は、彼らが出演していた会場、マーサー・アーツ・センターに出向いたのですが、そこに集まっていたのはダウンタウンのアーチストたちでした。彼らはワイルドかつエキサイティングで、ショッキングですらあったのです。
ニューヨーク・ドールズのことは初めて観た時から気に入りました。やたら音が大きく、テンポも速かったのですが、それでいてドールズ、お人形さんのような恰好をしていたのです。彼らのことを女装しているという人もいました。確かに彼らはメイクをしていましたし、服装にしても、それこそデパートの婦人服売り場に並んでいそうなものでした。それでも私としては、彼らのような身なりの女性を見たためしがありませんでした。
実際のところ、彼らは実に男っぽい集団でした。人形のような恰好をしていたのは、女の子は人形で遊ぶものであり、そして彼らとしては、女の子の遊び相手になりたいからという理由でそうしていたのです。
彼らとはすぐに親しくなり、それから数年間、彼らの写真やビデオを撮っていました。彼らのセカンドアルバム『Too Much Too Soon』には私の写真も使われていますが、このタイトル自体がまさしく彼らをうまく表しています。彼らはあまりにも過剰であまりにも早すぎた。後に続く、着飾るタイプのバンドすべてに影響を与えた存在でした。ドールズが出てきた70年代初めには、ロックバンドは着るものに無頓着で、60年代のヒッピー風の恰好をしているのが普通でしたから、彼らの目立ちようには凄いものがありました。
彼らは着飾ることにも、カメラの前でポーズを取ることにも積極的だったので、私としては大いに助かりました。ニューヨークでバレンタインデーにライブを行った時は1930年代のギャング風のスタイルで決めていました。彼らは『The Lipstick Killers』という映画でギャングに扮して出演していますが、それは1929年にシカゴで起こった聖バレンタインデーの悲劇というギャング絡みの有名な事件が元になっています。
1973年、ドールズはハリウッドに行き、私も同行して、バンドを代表するような写真をいくつか撮ることができました。ハリウッドに行くならということで、彼らの衣装やメイクもいっそう凝ったものになり、いよいよ豪勢なグラム風のものになっていました。いわば、いつもよりも「一段上がった」感じになっており、そのことはインタビューでの発言にも表れていました。ある時、取材者がデヴィッド・ボウイの話を持ち出したことがありました。最近ボウイは両性愛者、バイセクシャルであることを公表しましたが、あなたはどうなんですかと訊かれたドールズのヴォーカリスト、デヴィッド・ヨハンセンはこう言ってのけました。「それならさしずめ、おれは三性愛者、トリセクシャル(Tri-sexual)だよ。何だって試すからな!」
ニューヨーク・ドールズについてもっと知りたいなら、まずは彼らのレコードをじっくり聴いてみることをおすすめします。また私が出がけた映像もソフト化されていますし、写真もいろいろ出ていますので、それらも参考になることでしょう。

Syl Sylvain, Jerry Nolan, David Johansen, Johnny Thunders and Arthur Kane of The New York Dolls wearing red patent leather in Bronx, NY. 1975. © Bob Gruen

Arthur Kane, David Johansen, Jerry Nolan, Johnny Thunders and Syl Sylvain of the New York Dolls in Los Angeles, CA. September 1973. © Bob Gruen

▶︎第6回

『ライト・プレイス ライト・タイム あるロック・フォトグラファーの回想』

世界で最もロックを撮った写真家、ボブ・グルーエン初の自伝。250枚超のロックレジェンドたちの写真を掲載した永久保存版!

ジョン・レノン、ボブ・ディラン、ミック・ジャガー、エルトン・ジョン、セックス・ピストルズ、キッス…伝説的ミュージシャンたちとともに1960年代から半世紀以上を歩んできたロックフォトグラファー、ボブ・グルーエン初の回想録『ライト・プレイス ライト・タイム あるロック・フォトグラファーの回想』が遂に日本上陸。
本書では、被写体となったアーティストとの逸話をはじめ、ロックの黎明期より活動してきた著者ならではのエピソードが満載。1970年代よりたびたび訪れた日本の思い出なども存分に語られます。
カラー多数含む250点超の写真を掲載した永久保存版です。

【書誌情報】

書名:ライト・プレイス ライト・タイム あるロック・フォトグラファーの回想
著者:ボブ・グルーエン/デイヴ・トンプソン
訳者:浅尾敦則
仕様: A5判(210×148mm)/ソフトカバー/500頁
価格:3,850円(本体3,500円)
ISBN:978-4-910218-07-6
発売日:2024年8月
発行元:ジーンブックス/株式会社ジーン

▶︎詳細・ご購入はこちら

刊行記念ボブ・グルーエンインタビュー配信中!

クレイジーな時代にロック写真家として生きるために見出した「音楽業界のサバイバル術」——ボブ・グルーエンインタビュー<第1回>

https://books.jeane.jp/article/interview_bobgruen_1/

ボブ・グルーエン(Bob Gruen)

Profile

ボブ・グルーエン(Bob Gruen)

1945年ニューヨーク州生まれ。ロック・フォトグラファーの草分けにして第一人者。1970年代初頭にプロの写真家として独立してからは多くのミュージシャンと親しくなり、とりわけニューヨーク移住後のジョン・レノン、オノ・ヨーコとは密接な交流を持った。また英米のパンク、ニューウェーブを当初より記録してきたことでも知られる。日本とのつながりも深く、70年代よりたびたび来日し、一時は東京に居を構えていた。2017年には写真集『ROCK SEEN』(SMASH)が日本でも刊行され、あわせて写真展も開催された。ニューヨーク在住。

「アリス・クーパー」—— ロックフォトグラファー、ボブ・グルーエンの思い出話【4】 「ラモーンズ」——ロックフォトグラファー、ボブ・グルーエンの思い出話【6】
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