70年代、80年代のロックスターたちとの日々を綴ったエッセイを、編集部が厳選してご紹介!全9回を1話ごとに平日連日配信
英字雑誌Tokyo Journalにて連載された、世界的ロックフォトグラファー、ボブ・グルーエンの大好評ロックエッセイを、同誌編集部のご厚意により日本語バージョンでお届けします。
本連載では、世界中のロックスターたちに愛されたボブ・グルーエンの幅広い交友ぶりにフォーカスを当てました。
今年発売されたばかりの、ボブ・グルーエン初の自伝『ライト・プレイス ライト・タイム あるロック・フォトグラファーの回想』(ジーンブックス)の中でより詳しく語られるエピソードもありますので、本書を片手に読み比べつつ、ロック黄金期の回想ドキュメンタリーをお楽しみください。
<第4回>アリス・クーパー
Alice Cooper Retrospective
アリス・クーパーを初めて撮影したのは1971年のことで、場所はかつてニューヨークにあった伝説のライブ会場、フィルモア・イーストでした。その時思ったのは、とにかく演劇的なライブだということでした。アリスはただマイクの前に立って歌うだけではありませんでした。どの曲でもシンプルでありながら印象的な小道具を使っていたのです。
ショーにはこんな場面もありました。拘束衣を着せられたアリスが、なんとかして自由の身になろうとするものの、最後には電気椅子に座らされてしまうのです。後に電気椅子は絞首台やギロチンになり、この趣向は今も続いています。
アリス自身は、自分のショーは悪者が自身の誤ったふるまいによって処刑されるという筋書きだと話していました。それはあたかも、ロックをサントラに使ったホラー映画のようなものなのです。
1973年にはアリスともひんぱんに仕事をするようになっていました。その頃のアリスはトップ10のヒット曲もいくつか出しており、知名度も上がっていました。彼のバンドはコネチカットに一軒家を借りていて、そこで撮影もしました。
私が気に入っているアリスの写真にこんなものがあります。ジャケット姿の彼がくつろいだ様子になっていて、その服にはネズミがまとわりついているのです。
また別の機会では、有名なラジオDJのウルフマン・ジャックとの撮影もありました。それはクリスマス用の写真で、アリスがサンタに扮して、ひざの上にウルフマン・ジャックをあたかも小さな子供のように乗せているというものでした。
アリスと親交があったのがサルバドール・ダリでした。ダリは彼のショーにあるシュールなところが気に入っていたのです。ダリが動くホログラムを世界で初めて手がけることになった時、彼がモデルに選んだのがアリスでした。
その時、私が撮った写真には、ダリがアリスの脳をチョコレート・エクレアと一緒に持っていて、その周りをアリが這っているというものがあります。また、このホログラムのためにダリは250万ドル相当のダイヤモンドを手配しました。それだけのものであれば、きっとホログラムにすばらしい輝きを付け加えてくれるだろうと思ったのです。
同じ1973年にアリスは「ビリオン・ダラー・ベイビーズ」と銘打ったツアーを敢行しましたが、これは当時としては最大級の規模となるものでした。この時の写真には、アリスが刀を突き刺した人形を観客の上にかざしている姿を捉えたものがあります。これ自体奇妙ではありますが、さらに奇妙なのが、この人形を触ろうとして観客が手を伸ばしていたことです。
アリスは究極のパフォーマーであり、彼のショーは年を重ねるごとに磨きがかけられていきました。1989年にはMTVのハロウィン番組で司会を務めていますが、ゲストで呼ばれていたのがイギー・ポップでした。アリスがトリック・オア・トリート(お菓子をねだるジェスチャー)でイギーに容器を差し出したのですが、そこにはピーナッツバターが入っていました。イギーはそれを手ですくうと、アリスの顔に塗りつけたのです。
アリスは今もツアーを続けており、彼自身もあいかわらず愉快な人であり続けています。

01 – Alice at Filmore East – NYC – 197/02 – Alice always puts on his own makeup -USA – 1975

03 – Early portrait session, NYC – 1972/ 04 – Alice in the guillotine – Detroit -1973

05 – Alice & Wolfman Jack – NYC – 1973/06 – Alice Cooper in Rat Jacket- Greenwich Connecticut – 1973

07 – Alice with Baby on Sword – Spectrum, Philadelphia – 1973/08 – Alice Cooper Group as Sailors – Los Angeles – 1973

09 – Alice & Salvador Dali – NYC – 1973/10 – Alice Cooper -NYC – 1975

11 – Iggy Pop and Alice Cooper – MTV -NYC – 1989/12 – Alice Cooper- Beacon Theatre -NYC – 2013
▶︎第5回
『ライト・プレイス ライト・タイム あるロック・フォトグラファーの回想』
世界で最もロックを撮った写真家、ボブ・グルーエン初の自伝。250枚超のロックレジェンドたちの写真を掲載した永久保存版!
ジョン・レノン、ボブ・ディラン、ミック・ジャガー、エルトン・ジョン、セックス・ピストルズ、キッス…伝説的ミュージシャンたちとともに1960年代から半世紀以上を歩んできたロックフォトグラファー、ボブ・グルーエン初の回想録『ライト・プレイス ライト・タイム あるロック・フォトグラファーの回想』が遂に日本上陸。
本書では、被写体となったアーティストとの逸話をはじめ、ロックの黎明期より活動してきた著者ならではのエピソードが満載。1970年代よりたびたび訪れた日本の思い出なども存分に語られます。
カラー多数含む250点超の写真を掲載した永久保存版です。
【書誌情報】
書名:ライト・プレイス ライト・タイム あるロック・フォトグラファーの回想
著者:ボブ・グルーエン/デイヴ・トンプソン
訳者:浅尾敦則
仕様: A5判(210×148mm)/ソフトカバー/500頁
価格:3,850円(本体3,500円)
ISBN:978-4-910218-07-6
発売日:2024年8月
発行元:ジーンブックス/株式会社ジーン
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刊行記念ボブ・グルーエンインタビュー配信中!
クレイジーな時代にロック写真家として生きるために見出した「音楽業界のサバイバル術」——ボブ・グルーエンインタビュー<第1回>
(https://books.jeane.jp/article/interview_bobgruen_1/)

Profile
ボブ・グルーエン(Bob Gruen)1945年ニューヨーク州生まれ。ロック・フォトグラファーの草分けにして第一人者。1970年代初頭にプロの写真家として独立してからは多くのミュージシャンと親しくなり、とりわけニューヨーク移住後のジョン・レノン、オノ・ヨーコとは密接な交流を持った。また英米のパンク、ニューウェーブを当初より記録してきたことでも知られる。日本とのつながりも深く、70年代よりたびたび来日し、一時は東京に居を構えていた。2017年には写真集『ROCK SEEN』(SMASH)が日本でも刊行され、あわせて写真展も開催された。ニューヨーク在住。