70年代、80年代のロックスターたちとの日々を綴ったエッセイを、編集部が厳選してご紹介!全9回を1話ごとに平日連日配信
英字雑誌Tokyo Journalにて連載された、世界的ロックフォトグラファー、ボブ・グルーエンの大好評ロックエッセイを、同誌編集部のご厚意により日本語バージョンでお届けします。
本連載では、世界中のロックスターたちに愛されたボブ・グルーエンの幅広い交友ぶりにフォーカスを当てました。
今年発売されたばかりの、ボブ・グルーエン初の自伝『ライト・プレイス ライト・タイム あるロック・フォトグラファーの回想』(ジーンブックス)の中でより詳しく語られるエピソードもありますので、本書を片手に読み比べつつ、ロック黄金期の回想ドキュメンタリーをお楽しみください。
<第2回>アイク&ティナ・ターナー
私がアイク&ティナ・ターナーに出会ったのは24歳の時で、初めて仕事で一緒になった有名人でした。友人の勧めで彼らのショーを観て、たちまちファンになったのです。
ホンカモンカクラブという会場に彼らのショーを観に行った時はカメラも持参していました。ショーの終盤になって、ステージで踊るティナを撮影しようとしたところ、絞りや露出で迷ってしまいました。そうするうちに、露出を1秒に設定すれば、踊るティナの姿をストロボの光で捉えられるのではないかと思い付きました。

01 – 02 Tina Turner, Honka Monka Club, NYC – July 8, 1970
そうして撮ったうちの一枚が、ティナのエネルギッシュなところを実に的確に捉えていたため、数日後にまたアイク&ティナ・ターナーのショーを観に行った時に友人たちに見せたのです。終演後、友人の勧めでアイクとティナにも見てもらったところ、ふたりとも気に入ってくれて、もっと写真を撮ってほしいとまで言われました。
これが私のキャリアにとっての転機になりました。アイクのおかげでレコード会社の広報担当と知り合うようになり、その人が私をあちこちのパーティに連れていってくれて、たくさんの業界人に紹介してくれたのです。
またアイクは私をカリフォルニアに呼んで、一週間かけて撮影を行い、そのうちの一枚がアイク&ティナ・ターナーのアルバム『Nuff Said』のジャケットになりました。私にとって初めてのジャケット写真です。また彼らのショーをビデオでもよく撮影していました。ティナもビデオを喜んでいました。ショーの内容を映像ですぐに確認できるため、メンバーに観せることでショーを改善できたからです。この時の映像は後に編集し直されてDVD化されました。
アイクとティナの関係は70年代半ばに破局を迎えましたが、二人が別々に活動するようになっても私は両方とも連絡を取り続けました。1983年、ティナがニューヨークでカムバックコンサートを行った際には私も現場にいて、楽屋までお祝いに来ていたキース・リチャーズとティナの素晴らしい写真を撮ることができました。
それからの20年間、ティナはソロアーチストとして華々しく活躍し、その中にはテレビ中継もされたライブエイドでのミック・ジャガーとのデュエットもあれば、私も立ち会ったパリ・エッフェル塔の真ん前でのビデオ撮影もありました。一方で2002年には、これもパリでの出来事ですが、演奏するアイクの姿を目の当たりにする機会にも恵まれたのです。

03 – Tina Turner, Eiffel Tower, Paris, France – September 1984/04 – Ike Turner, Hotel Le Meridien Etoile, Paris, France–February 2002

05 – Keith Richards & Tina Turner, The Ritz,NYC – 1983/06 – Tina Turner, Backstage at Jones Beach Theater,Wantagh, NY – August 1987

07 – Ike & Tina Turner with The Ikettes,International Youth Expo, NYC – July 5, 1971/08 – Ike & Tina Turner, Honka Monka Club, NYC–July 8, 1970

09 – Tina Turner and Mick Jagger, Live Aid, JFK Stadium,Philadelphia, PA. – July 13, 1985/ 10 – Ike & Tina Turner, Empire Room at The Waldorf-Astoria, NYC – March 1976
▶︎第3回
『ライト・プレイス ライト・タイム あるロック・フォトグラファーの回想』
世界で最もロックを撮った写真家、ボブ・グルーエン初の自伝。250枚超のロックレジェンドたちの写真を掲載した永久保存版!
ジョン・レノン、ボブ・ディラン、ミック・ジャガー、エルトン・ジョン、セックス・ピストルズ、キッス…伝説的ミュージシャンたちとともに1960年代から半世紀以上を歩んできたロックフォトグラファー、ボブ・グルーエン初の回想録『ライト・プレイス ライト・タイム あるロック・フォトグラファーの回想』が遂に日本上陸。
本書では、被写体となったアーティストとの逸話をはじめ、ロックの黎明期より活動してきた著者ならではのエピソードが満載。1970年代よりたびたび訪れた日本の思い出なども存分に語られます。
カラー多数含む250点超の写真を掲載した永久保存版です。
【書誌情報】
書名:ライト・プレイス ライト・タイム あるロック・フォトグラファーの回想
著者:ボブ・グルーエン/デイヴ・トンプソン
訳者:浅尾敦則
仕様: A5判(210×148mm)/ソフトカバー/500頁
価格:3,850円(本体3,500円)
ISBN:978-4-910218-07-6
発売日:2024年8月
発行元:ジーンブックス/株式会社ジーン
▶︎詳細・ご購入はこちら
刊行記念ボブ・グルーエンインタビュー配信中!
クレイジーな時代にロック写真家として生きるために見出した「音楽業界のサバイバル術」——ボブ・グルーエンインタビュー<第1回>
(https://books.jeane.jp/article/interview_bobgruen_1/)

Profile
ボブ・グルーエン(Bob Gruen)1945年ニューヨーク州生まれ。ロック・フォトグラファーの草分けにして第一人者。1970年代初頭にプロの写真家として独立してからは多くのミュージシャンと親しくなり、とりわけニューヨーク移住後のジョン・レノン、オノ・ヨーコとは密接な交流を持った。また英米のパンク、ニューウェーブを当初より記録してきたことでも知られる。日本とのつながりも深く、70年代よりたびたび来日し、一時は東京に居を構えていた。2017年には写真集『ROCK SEEN』(SMASH)が日本でも刊行され、あわせて写真展も開催された。ニューヨーク在住。